【2026年最新】赤字決算で法人税が戻る?欠損金の繰戻し還付を税理士が解説

【2026年最新】赤字決算で法人税が戻る?欠損金の繰戻し還付を税理士が解説
会社が赤字決算になった場合、「今期は法人税がかからないから、それで終わり」と考えていませんか?
実は、前期に黒字を計上して法人税を納めていた会社は、今期の赤字を利用して、前期に納めた法人税の還付を受けられる可能性があります。
これが「欠損金の繰戻しによる還付制度」です。
【結論】赤字決算でも、前期の法人税が戻る可能性があります。
青色申告を行う中小法人等が、前期に黒字で法人税を納め、今期に税務上の欠損金が発生した場合、一定の要件を満たせば法人税の還付を請求できます。
ただし、申請には期限があります。決算申告時に還付制度の利用を検討することが重要です。
1.欠損金の繰戻し還付制度とは?
欠損金の繰戻し還付制度とは、赤字が発生した事業年度の税務上の欠損金を、原則として前の事業年度に繰り戻し、すでに確定した法人税の一部または全部について還付を請求できる制度です。
例えば、次のような会社を考えてみましょう。
| 比較項目 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 税務上の所得・欠損金 | 所得1,000万円 | 欠損金500万円 |
| 法人税額 | 150万円(仮定) | 0円 |
| 経営状況 | 黒字 | 赤字 |
この会社では、前期に法人税150万円を納めています。
今期の欠損金500万円を前期に繰り戻すと、次の計算によって還付額を求めることができます。
150万円 × 500万円 ÷ 1,000万円 = 75万円
つまり、この例では75万円の法人税還付を請求できる計算になります。
なお、前期の法人税額150万円は説明用の仮定です。実際の還付額は、前期の法人税額や所得金額、税額控除などにより異なります。
2.なぜ赤字決算時にこの制度が重要なのか?
赤字決算の会社では、利益だけでなく、手元の現金預金も減少していることがあります。
特に、人件費の上昇、材料費の高騰、設備投資による負担増加、売上の減少などが重なると、資金繰りへの影響は大きくなります。
そのようなとき、法人税の還付は、借入金とは異なる資金調達上のメリットがあります。
- 金融機関からの新たな借入れが不要
- 借入金のような返済義務がない
- 借入利息が発生しない
- 還付された資金を運転資金などに活用できる
赤字になった会社では、税金の計算だけでなく、還付を受けられる税金がないかという視点が重要です。
3.欠損金の繰戻し還付を受けられる会社の条件
一般的な青色申告法人の繰戻し還付では、主に次の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 対象法人 | 原則として資本金1億円以下の中小法人等。ただし大法人による完全支配関係などの除外条件あり |
| 青色申告 | 還付対象年度から欠損事業年度の前年度まで、継続して青色申告書による確定申告をしていること |
| 赤字決算 | 欠損事業年度に税務上の欠損金が発生していること |
| 確定申告 | 欠損事業年度の青色申告書を提出期限までに提出すること |
| 還付請求 | 欠損事業年度の確定申告書と同時に還付請求書を提出すること |
資本金が1億円以下であっても、大法人の100%子会社などは対象外となる場合があります。
また、解散や災害損失などについては別の特例が設けられています。
4.繰戻し還付と繰越控除は何が違う?
赤字決算時に検討すべき制度は、繰戻し還付だけではありません。
もう一つ重要なのが「欠損金の繰越控除」です。
| 比較項目 | 繰戻し還付 | 繰越控除 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 過去に納めた法人税を還付してもらう | 将来の所得から欠損金を控除する |
| 対象期間 | 原則として前の事業年度 | 原則として翌期以降10年間 |
| 現金への影響 | 還付により現金が増える | 将来の法人税負担を軽減する |
| 向いているケース | 現在の資金繰りを改善したい会社 | 将来の黒字回復が見込まれる会社 |
| 注意点 | 還付請求の期限がある | 将来の課税所得がなければ控除効果を活用できない |
同じ欠損金について、繰戻し還付と繰越控除を二重に利用することはできません。
ただし、欠損金の一部を繰戻し還付に利用し、残りを繰越控除の対象とすることは可能です。
5.具体例:どちらが有利になるのか?
前期に法人税150万円を納め、今期に500万円の欠損金が発生した会社を考えます。
ケース①:繰戻し還付を利用する
前期の所得1,000万円、法人税150万円という仮定では、今期の欠損金500万円を繰り戻すことで、75万円の法人税還付を請求できる計算になります。
資金繰りが厳しい会社にとっては、手元資金を確保できる点が大きなメリットです。
ケース②:繰越控除を利用する
今期の欠損金500万円を翌期以降に繰り越し、将来の所得から控除する方法です。
仮に翌期に500万円の課税所得が発生した場合、適用要件を満たす中小法人であれば、繰越欠損金によってその所得を全額控除できる可能性があります。
どちらが有利かは、今後の利益予測、法人税率、資金繰り、欠損金の利用可能額などによって変わります。
当事務所では、単純に還付額だけを比較するのではなく、今後3年間程度の利益計画と資金繰り予測を踏まえた判断をおすすめしています。
6.歯科医院・クリニックでも活用できる?
医療機関でも、税務上の欠損金が発生した場合には、繰戻し還付を検討する価値があります。
例えば、次のようなケースです。
- 歯科医院が診療チェアを増設し、減価償却費などの負担が増えた
- クリニックが看護師やリハビリスタッフを増員した
- 診療所が改装工事を行い、修繕費などが増加した
- 新規開業後、患者数が計画を下回った
- 医療法人の人件費が増加し、赤字決算となった
ただし、設備投資額がそのまま損金になるわけではありません。資産計上や減価償却の取扱いを確認する必要があります。
また、個人開業医と医療法人では税制が異なります。今回解説している法人税の繰戻し還付は法人向けの制度です。
医療法人の場合には、法人税の還付だけでなく、診療報酬収入、給与負担、借入返済、設備投資計画を総合的に検討することが重要です。
7.法人税以外の税金も戻ってくる?
ここは特に間違えやすいポイントです。
| 税金の種類 | 繰戻し還付との関係 |
|---|---|
| 法人税 | 要件を満たせば還付対象 |
| 地方法人税 | 法人税の繰戻し還付に伴い、一定の還付規定あり |
| 法人住民税 | 法人税の還付に連動して、原則として直接同額が還付される制度ではない。欠損金の繰戻し還付に伴う控除等を個別確認 |
| 法人事業税 | 法人税と同じ仕組みで過年度税額が自動還付されるわけではない |
| 消費税 | 赤字決算であることだけを理由とする繰戻し還付の対象ではない |
なお、法人住民税や法人事業税については、自治体の申告書や繰越控除の取扱いなどを別途確認する必要があります。
8.申請期限と手続の流れ
通常の青色申告法人の繰戻し還付では、赤字事業年度の法人税確定申告書を提出期限内に提出し、同時に還付請求書を提出することが必要です。
例えば、2026年3月31日決算の法人で、申告期限の延長がない場合、原則として2026年6月1日が提出期限となります。
申告期限の延長や休日の関係などによって実際の期限が異なる場合があるため、個別に確認してください。
手続の流れ
- 前期の法人税申告書を確認する
- 今期の税務上の欠損金を計算する
- 繰戻し還付と繰越控除の有利不利を比較する
- 欠損金の繰戻しによる還付請求書を作成する
- 法人税確定申告書と同時に提出する
- 税務署の確認後、還付を受ける
還付請求書はe-Taxによる提出にも対応しています。
なお、還付請求を行ったからといって、直ちに還付金が振り込まれるわけではありません。税務署による内容確認などが行われるため、入金時期を資金繰り表に織り込む際は慎重な見積りが必要です。
9.注意したい5つのポイント
① 会計上の赤字と税務上の欠損金は異なる
決算書の当期純損失が500万円でも、税務調整後の欠損金が同額になるとは限りません。
② 前期に法人税を納めていない場合は注意
前期が黒字でも、繰越欠損金や税額控除などによって還付対象となる法人税額がなければ、通常の繰戻し還付を受けられないことがあります。
③ 申告書と還付請求書は同時提出が原則
通常の青色欠損金の繰戻し還付では、提出期限と同時提出の要件が重要です。申告後に制度の存在に気付いても、利用できない可能性があります。
④ 大法人の子会社は対象外となる場合がある
資本金が1億円以下であっても、大法人による完全支配関係などがある場合には、通常の中小法人向け制度を利用できないことがあります。
⑤ 還付額だけでなく将来の税負担も比較する
繰戻し還付を利用した欠損金は、将来の繰越控除に再利用できません。
今すぐ還付を受けるべきか、将来の節税に利用すべきかは、会社ごとの判断が必要です。
10.赤字決算が見込まれる会社が今すぐやるべきこと
決算を迎える前に、次の項目を確認しましょう。
- 前期の法人税額はいくらだったか
- 今期の税務上の欠損金はいくらになりそうか
- 青色申告の適用要件を満たしているか
- 繰戻し還付を利用した場合の還付見込額はいくらか
- 翌期以降の黒字回復見込みはあるか
- 今後6か月から1年間の資金繰りは問題ないか
- 還付請求書の提出期限はいつか
11.税理士として提案したい「次の一手」
赤字決算の会社では、法人税の還付を検討するだけでは十分ではありません。
当事務所では、次のような対策も併せて検討することをおすすめしています。
① 資金繰り表を作成する
還付見込額を確認し、借入返済、人件費、税金の支払予定を含めて資金繰りを予測します。
② 金融機関との借入条件を見直す
赤字の原因が一時的なものである場合、事業計画や改善計画を作成したうえで、返済条件の見直しなどを金融機関に相談することも選択肢となります。
③ 赤字の原因を数字で把握する
売上減少による赤字なのか、人件費や固定費の増加による赤字なのか、設備投資に伴う一時的な赤字なのかを分析します。
④ 翌期の黒字回復策を具体化する
売上アップ、価格設定の見直し、固定費削減、業務効率化などを組み合わせて、翌期以降の利益改善を目指します。
赤字決算を単なる悪い結果として捉えるのではなく、経営改善のきっかけにすることが重要です。
12.まとめ|赤字決算でも税金が戻る可能性を見逃さない
【今回の重要ポイント】
- 前期黒字・今期赤字の中小法人等は繰戻し還付を検討する
- 還付対象は原則として前期等の法人税
- 税務上の欠損金があることが必要
- 確定申告書と還付請求書の同時提出が原則
- 繰越控除との有利不利を比較する
- 還付だけでなく、資金繰り改善と黒字回復策も考える
赤字決算であっても、適切な税務対策によって資金繰りを改善できる可能性があります。
「今期は赤字になりそう」「前期は法人税をかなり納めた」という経営者の方は、決算申告前に繰戻し還付の適用可能性を確認してみてください。
赤字決算・法人税還付・資金繰り改善のご相談
当事務所は、単なる申告作業にとどまらず、節税・相続・保険の見直しから、売上アップや経費削減に至るまで、お客様の利益を最大化する「次の一手」を能動的にご提案します。
お金に関するあらゆるお悩みを、ぜひ【超提案型】のプロにご相談ください。
一ノ瀬公認会計士・税理士事務所
【超提案型】公認会計士・税理士 一ノ瀨 聡
参考資料・出典
- 国税庁 No.5763 欠損金の繰戻しによる還付
- 国税庁 No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
- 国税庁 No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者
- 国税庁 e-Tax 法人税関係の申請・届出手続
※本記事は2026年10月11日時点の公表情報に基づいて作成しています。実際の制度適用や還付額は、法人の状況、申告内容、税制上の要件によって異なります。











