【2027年1月開始】防衛特別所得税で給与の手取りは減る?給与計算・年末調整への影響を税理士が解説

【2027年開始】防衛特別所得税で給与の手取りは減る?税理士が解説
2027年1月1日から、新たに「防衛特別所得税」が導入されます。
「給与から新たに1%の税金が引かれるの?」「従業員の手取りは減る?」「給与計算ソフトを変更する必要がある?」と気になっている経営者や給与計算担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、防衛特別所得税の仕組み、復興特別所得税との関係、給与計算や年末調整への影響、会社が2026年中に準備すべきことを、公認会計士・税理士の立場から分かりやすく解説します。
【結論】2027年から防衛特別所得税1%が始まりますが、復興特別所得税が同時に1%分引き下げられるため、両者の合計税率は変わりません。
したがって、防衛特別所得税の導入だけを理由に、給与の源泉徴収税額が増えるわけではありません。ただし、2027年には所得税の控除制度や源泉徴収税額表にも改正があるため、給与計算ソフトの更新と税額表の確認は必要です。
1.防衛特別所得税とは?2027年1月から始まる新しい税金
防衛特別所得税は、防衛力強化に必要な財源を確保するため、所得税に上乗せする形で課される国税です。
2026年度税制改正により創設され、2027年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税から適用されます。
| 制度項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 防衛特別所得税 |
| 開始時期 | 2027年1月1日 |
| 税率 | 基準所得税額の1% |
| 対象 | 原則として所得税の納税義務者 |
| 徴収方法 | 所得税と併せて徴収・納付 |
| 課税期間 | 2027年以後、当分の間 |
注意したいのは、給与総額に対して一律1%が追加される制度ではないことです。所得税額を基準に計算する仕組みです。
2.復興特別所得税は2.1%から1.1%に引き下げ
今回の改正では、防衛特別所得税の創設と同時に、復興特別所得税の税率も変更されます。
| 税金の種類 | 2026年まで | 2027年から |
|---|---|---|
| 所得税 | 通常の所得税率 | 通常の所得税率 |
| 復興特別所得税 | 所得税額の2.1% | 所得税額の1.1% |
| 防衛特別所得税 | なし | 所得税額の1.0% |
| 上乗せ税率の合計 | 2.1% | 2.1% |
復興特別所得税の課税期間は、2037年末までから2047年末までへ10年間延長されます。
つまり、上乗せ税率の合計を維持する一方、復興特別所得税の課税期間を延長する改正でもあります。
3.防衛特別所得税で給与の手取りは減る?
結論として、防衛特別所得税の創設そのものによって、源泉徴収税額が一律に増えることはありません。
例えば、源泉徴収の対象となる報酬等について、本来の所得税率が10%である場合を考えてみましょう。
| 税額の内訳 | 2026年まで | 2027年から |
|---|---|---|
| 本来の所得税率 | 10% | 10% |
| 復興特別所得税相当 | 0.21% | 0.11% |
| 防衛特別所得税相当 | なし | 0.10% |
| 合計源泉徴収税率 | 10.21% | 10.21% |
この例では、源泉徴収の合計税率は改正前後とも10.21%です。
ただし、給与の源泉徴収は、この10.21%を給与に直接掛けて計算するわけではありません。実際の給与計算では、その年分の源泉徴収税額表を使用します。
また、2027年分の税額表は基礎控除や給与所得控除等の改正も反映しているため、従業員の源泉徴収税額が2026年と異なる場合があります。
4.2027年の給与計算は何が変わる?
会社が特に注意すべきことは、2027年分の源泉徴収税額表を使用することです。
国税庁は、2027年分の源泉徴収税額表を公開しています。
| 給与計算の項目 | 対応内容 |
|---|---|
| 毎月の給与 | 2027年分の源泉徴収税額表を使用 |
| 賞与 | 2027年分の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表等を使用 |
| 給与計算ソフト | 2027年分の税制改正対応状況を確認 |
| 源泉所得税の納付 | 防衛特別所得税等を含めて従来と同様に一括納付 |
| 給与明細 | 税額計算・表示内容が正しいか確認 |
| 年末調整 | 2027年分の計算ルールを適用 |
防衛特別所得税だけを別途計算し、給与から追加で1%徴収する処理は不要です。
給与ソフトの更新漏れがあると、他の所得税改正も含めて誤った源泉徴収税額となるおそれがあります。
5.具体例|従業員10人の会社では何を確認する?
従業員10人の会社で、毎月の給与計算を外部委託せずに行っているケースを考えます。
2027年1月から防衛特別所得税が導入されても、それだけを理由に従業員の給与を変更したり、追加の1%を天引きしたりする必要はありません。
一方で、次の対応は必要です。
- 給与計算ソフトが2027年分の税額表に対応しているか確認する。
- 扶養親族等の情報を最新の状態にする。
- 2026年12月分と2027年1月分の給与計算を区別する。
- 2027年最初の給与計算結果を、国税庁の税額表と照合する。
- 従業員に税制改正の内容を説明できるようにする。
例えば、従業員から「防衛特別所得税が始まるので手取りが減るのですか?」と質問された場合は、「防衛特別所得税と復興特別所得税の合計税率は変わりません。ただし、別の所得税改正によって給与から引かれる税額が変わる場合はあります」と説明すると分かりやすいでしょう。
6.2026年の年末調整には適用される?
2026年分の年末調整には、防衛特別所得税は適用されません。
2026年分は従来の復興特別所得税2.1%を含めて計算します。
一方、2027年分の年末調整では、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を含めて計算します。
いずれも合計は、年調所得税額の102.1%です。
特に、2026年末から2027年初めにかけては、給与の支給日、対象となる所得の帰属年分、年末調整の対象年分を確認することが重要です。
7.クリニック・歯科医院への影響
クリニックや歯科医院でも、医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、歯科助手、受付職員などの給与計算に関係します。
特に注意したいのは、職員ごとの扶養状況や勤務形態が異なることです。
- 常勤職員とパート職員の源泉徴収区分を確認する。
- 扶養控除等申告書の提出状況を確認する。
- 賞与の源泉徴収税額が正しく計算されているか確認する。
- 給与計算を委託している場合は、委託先の対応状況を確認する。
- 給与計算と年末調整の担当者を明確にする。
また、診療所では、給与以外にも税理士等への報酬や講演料など、源泉徴収が必要となる支払いが発生することがあります。
こうした支払いについても、防衛特別所得税を含む源泉徴収の仕組みを確認する必要があります。ただし、通常の合計源泉徴収税率は、今回の改正だけでは変わりません。
8.間違えやすいポイント
間違い① 給与から新たに1%を天引きする
防衛特別所得税1%は給与総額に対して課される税金ではありません。また、復興特別所得税の引下げと合わせると、上乗せ税率の合計は変わりません。
間違い② 2027年も2026年の源泉徴収税額表を使用する
2027年分の源泉徴収税額表は、他の所得税改正も反映して変更されています。必ず2027年分の表を使用してください。
間違い③ 2026年分の年末調整に防衛特別所得税を適用する
2026年分の年末調整では防衛特別所得税を適用しません。2027年分との混同に注意が必要です。
間違い④ 防衛特別所得税を別の納付書で納付する
源泉徴収した防衛特別所得税は、所得税・復興特別所得税と併せて納付します。別々の納付書を作成する必要はありません。
9.会社が2026年中にやるべきこと
| 確認項目 | 具体的な対応 | 優先度 |
|---|---|---|
| 給与ソフト | 2027年分への更新予定を確認 | 高 |
| 源泉徴収税額表 | 国税庁の2027年分を確認 | 高 |
| 年末調整 | 2026年分と2027年分を区別 | 高 |
| 従業員情報 | 扶養状況等を確認 | 高 |
| 納付事務 | 納付書・e-Taxの対応を確認 | 中 |
| 社内説明 | 手取りへの影響について周知 | 中 |
10.税理士としての「次の一手」|給与計算全体を見直す機会に
今回の改正は、単に新しい税金の名称を確認するだけでなく、給与計算業務を見直す良い機会でもあります。
当事務所では、次のような対応をおすすめしています。
① 給与計算の自動化
給与計算ソフトと勤怠管理システムの連携により、転記作業や入力ミスを減らすことを検討しましょう。
② 年末調整の電子化
扶養控除等申告書などの回収・確認を電子化することで、担当者の負担軽減につながります。
③ 人件費と資金繰りの分析
給与計算の見直しに合わせて、賞与、昇給、社会保険料の事業主負担を含めた年間人件費を試算しましょう。
例えば、従業員10人の会社で1人当たり月額5,000円の昇給を実施すると、基本給の増加だけで年間60万円の負担増になります。実際には、社会保険料等への影響も考慮する必要があります。
税制改正への対応だけでなく、採用・定着・賃上げと資金繰りを一体で考えることが重要です。
11.まとめ|2027年の給与計算は税額表の更新が重要
2027年1月から防衛特別所得税1%が導入されますが、復興特別所得税が1.1%に引き下げられるため、合計の上乗せ税率は2.1%で変わりません。
そのため、防衛特別所得税の創設だけを理由に給与の手取りが減るわけではありません。
一方で、2027年分の源泉徴収税額表は他の所得税改正も反映して変更されています。経営者や給与計算担当者は、2026年中にソフトウェアの対応状況と計算手順を確認しておきましょう。
12.参考資料・出典
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