【2026年最新裁決】講演料・副業の赤字は給与と相殺できない?事業所得と雑所得の違いを税理士が解説

【2026年裁決】講演・副業の赤字が否認?事業所得と雑所得の違い
会社役員や医師、歯科医師などが、本業とは別に講演やコンサルティングを行い、報酬を受け取るケースがあります。
こうした収入について、「継続的に活動しているから事業所得」「経費が収入を上回ったので給与所得と相殺できる」と考えていないでしょうか。
2026年2月6日、国税不服審判所は、講演や一般財団法人の理事等の業務から生じた所得について、事業所得ではなく雑所得に該当すると判断しました。
【結論】
講演料や副業収入が事業所得になるかどうかは、活動の継続性だけでは決まりません。
営利性、独立性、事業規模、収益の安定性などを総合的に判断する必要があります。
雑所得と判断された場合、その活動から生じた赤字を給与所得と損益通算することはできません。
1.なぜ今、事業所得と雑所得の区分が重要なのか?
近年、本業以外にも収入を得る働き方が広がっています。
- 医師が学会や企業で講演する
- 歯科医師が歯科医院向けの経営指導を行う
- 会社役員が経営コンサルティングを行う
- 会社員が副業で研修講師を務める
- 専門家が執筆やセミナーで報酬を受け取る
これらの収入が事業所得に該当するか、雑所得に該当するかによって、税金の計算方法が変わります。
特に注意したいのが、赤字が発生した場合です。
事業所得に該当する損失は、一定のルールに従って給与所得などと損益通算できます。一方、雑所得の損失は原則として他の所得と損益通算できません。
2.2026年2月6日の裁決では何が問題になったのか?
今回の事例では、請求人は法人役員や上場企業の社外取締役・監査役などを務め、多額の給与収入を得ていました。
その一方で、講演、税務に関する相談業務、一般財団法人等の理事としての活動などを行っていました。
請求人は、これらの活動を事業として申告し、赤字を他の所得と損益通算していました。
しかし、税務署は当該活動による所得を雑所得と判断して更正処分等を行い、国税不服審判所もその判断を支持しました。
裁決で確認された主な事情
| 判断項目 | 確認された事情 | 判断上の意味 |
|---|---|---|
| 講演活動 | 年間1~4回の講演を実施 | 一定の継続性は認められた |
| 収支 | 毎年1,000万円を超える必要経費を計上し、大幅な赤字が継続 | 営利性が乏しいと判断された |
| 事務所 | 賃借物件を使用し、年間400万円超の家賃を負担 | 一定の物的設備は認められた |
| 従業員 | 使用人を雇用していなかった | 人的設備は認められなかった |
| 生活基盤 | 別業務から多額の給与収入を得ていた | 赤字活動を給与収入で継続できる状況だった |
| 将来の収益 | 継続的に安定した収益を得られる可能性が認められなかった | 事業性を否定する重要な要素となった |
重要なのは、設備や継続性が一定程度認められても、それだけでは事業所得にならなかったという点です。
3.事業所得と雑所得は何が違う?
| 比較項目 | 事業所得 | 雑所得(業務) |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 社会通念上、事業として認められる活動による所得 | 事業所得等に該当しない業務による所得 |
| 必要経費 | 事業に必要な経費を計上可能 | 収入を得るために必要な経費を計上可能 |
| 給与所得との損益通算 | 原則可能(損失の内容による制限あり) | 不可 |
| 青色申告特別控除 | 要件を満たせば適用可能 | 適用不可 |
| 青色申告による純損失の繰越し | 一定の要件で可能 | 原則対象外 |
| 所得区分の判断 | 活動の実態を総合的に判断 | 活動の実態を総合的に判断 |
雑所得であっても必要経費が一切認められないわけではありません。ただし、私的な支出まで経費にできるわけではなく、収入との関連性を説明できることが重要です。
4.具体例:副業の赤字500万円を給与所得と相殺できる?
次のような会社役員を想定します。
- 年間給与所得:1,500万円
- 副業の講演収入:100万円
- 副業の必要経費:600万円
- 副業の収支:500万円の赤字
| 比較項目 | 事業所得の場合 | 雑所得の場合 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 副業の収支 | マイナス500万円 | マイナス500万円 |
| 給与所得との損益通算 | 原則可能 | 不可 |
| 通算後の所得金額 | 1,000万円 | 1,500万円 |
※説明用の仮定計算です。所得控除、青色申告特別控除、その他の所得や損益通算の制限などは考慮していません。
このように、所得区分によって課税対象となる所得金額に大きな差が生じる場合があります。
副業で赤字が出ているという理由だけで、給与所得と相殺して申告することは避けるべきです。
5.医師・歯科医師が特に注意したいケース
医師や歯科医師は、診療以外の専門的活動から報酬を受け取ることがあります。
| 活動内容 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 学会・セミナー講演 | 講演回数、契約、報酬額、継続性 |
| 歯科医院向け経営指導 | 顧客数、契約内容、利益計画、独立性 |
| 医療機器メーカーの研修講師 | 報酬の性質、業務委託か雇用か、活動実態 |
| 医療関連法人の役員 | 役員報酬の所得区分、職務内容、支払方法 |
| 医療関係の記事執筆 | 執筆頻度、契約件数、売上と経費の推移 |
なお、役員報酬は一般に給与所得となるケースが多く、講演料やコンサルティング報酬とは区別して検討する必要があります。
特に、医療法人から役員給与を受け取る院長先生が、個人名義で別の事業活動を行う場合は、活動ごとの所得区分を慎重に判断することが重要です。
6.開業届を出していれば事業所得になる?
開業届を提出していることや、帳簿を作成していることだけで、事業所得に該当すると決まるわけではありません。
また、青色申告の承認を受けていても、個々の活動が事業所得に該当するかは、その実態によって判断されます。
今回の裁決でも、一定の継続性、設備、労力が認められた一方、営利性や安定的な収益を得られる可能性が乏しいことが重視されました。
7.赤字が続いている場合に確認したい5つのポイント
- ① 売上の推移:売上が増加しているか、継続的な受注があるか
- ② 経費の妥当性:売上規模に対して家賃、交際費、旅費などが過大になっていないか
- ③ 収益改善計画:赤字を解消するための具体的な対策があるか
- ④ 事業の独立性:自己の責任と計算で活動しているか
- ⑤ 契約・取引実績:契約書、請求書、入金記録などで活動実態を説明できるか
赤字であること自体が、直ちに事業所得を否定する理由になるわけではありません。
開業初期の設備投資や一時的な売上減少など、合理的な理由で赤字になることもあります。
しかし、長期間にわたり収益改善が見込めず、本業の給与で赤字を補填している場合は、所得区分を再確認する必要があります。
8.税理士として提案したい「次の一手」
① 副業の収支を本業と分けて管理する
本業の給与や役員報酬と、副業の売上・経費を明確に分けましょう。
月別の収支を管理することで、副業自体が利益を生む活動なのかを把握できます。
② 赤字の原因を数値で分析する
例えば、年間売上200万円に対して家賃300万円、交際費150万円という状態であれば、固定費や活動方法の見直しが必要です。
税務上の説明だけでなく、経営面からも改善策を検討しましょう。
③ 事業計画と収益改善の記録を残す
料金改定、顧客開拓、サービス内容の見直し、経費削減などを実施し、その結果を記録することが重要です。
計画書があるだけで事業所得になるわけではありませんが、営利目的で継続的に活動していることを説明する資料になります。
④ 過去の確定申告を確認する
副業の赤字を給与所得と損益通算している場合は、過去の申告内容を確認する価値があります。
所得区分や経費計上に問題がある可能性があれば、税理士と相談して対応を検討しましょう。
9.まとめ|副業の赤字を節税目的で利用する前に確認を
2026年2月6日の裁決は、事業所得と雑所得の区分について、営利性や安定的な収益可能性が重要であることを示しています。
講演や副業を行っている場合は、開業届や帳簿の有無だけではなく、活動実態と収支の状況を確認する必要があります。
税金を減らすために赤字を作るのではなく、事業として利益を生み出す仕組みを整えることが、経営面でも税務面でも重要です。
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