【2026年最新】賃上げ率4.4%!中小企業・クリニックの人件費対策

【2026年最新】賃上げ率4.4%!中小企業・クリニックの人件費対策
厚生労働省は2026年10月21日、「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。
今回の調査では、1人当たりの平均賃金改定率は4.4%、月額改定額は13,926円となりました。また、賃金を引き上げた、または引き上げる予定の企業は92.0%に達しています。
賃上げが広がる中、中小企業やクリニックにとって重要なのは、単に給与を引き上げることではありません。
賃上げによる年間人件費の増加額を計算し、利益・資金繰り・採用・生産性を一体で見直すことが重要です。
例えば、従業員10人の給与を1人当たり月額13,926円引き上げると、年間の給与負担は約167万円増加します。社会保険料の事業主負担なども考慮する必要があります。
1.2026年の賃上げ調査で何が分かったのか?
厚生労働省の調査によると、2026年の賃上げ状況は次のとおりです。
| 調査項目 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 賃上げ実施・予定企業割合 | 91.5% | 92.0% |
| 1人平均賃金改定額(月額) | 13,601円 | 13,926円 |
| 1人平均賃金改定率 | 4.4% | 4.4% |
2026年は、賃金改定率が前年と同じ4.4%だった一方、改定額は325円増加しました。
企業が人材の確保や従業員の待遇改善を意識する中、給与水準を見直す動きが続いていることが分かります。
なお、この調査は常用労働者100人以上の民営企業を対象としています。従業員数人から数十人規模の会社やクリニックに、そのまま当てはめられる統計ではない点に注意が必要です。
2.なぜ今、中小企業も賃上げを考える必要があるのか?
人材採用における競争
求職者が就職先を選ぶ際、給与水準は重要な判断材料の一つです。特に経験者や専門職の採用では、近隣企業との待遇比較が必要になります。
既存従業員の定着
新規採用者の給与だけを引き上げると、既存従業員との給与バランスが崩れる場合があります。
勤続年数、資格、担当業務、貢献度などを踏まえ、給与体系全体を見直すことが重要です。
人件費増加による利益への影響
賃上げは従業員にとってプラスですが、企業にとっては継続的な固定費の増加につながります。
一度引き上げた基本給は、翌年度以降も原則として継続します。さらに賞与や社会保険料にも影響する可能性があります。
3.賃上げ率4.4%で年間人件費はいくら増える?
月額給与30万円の従業員について、4.4%の賃上げを実施した場合を考えてみましょう。
| 計算項目 | 賃上げ前 | 賃上げ後 |
|---|---|---|
| 月額給与 | 300,000円 | 313,200円 |
| 月額給与増加額 | 0円 | 13,200円 |
| 年間給与(12か月) | 3,600,000円 | 3,758,400円 |
| 年間給与増加額 | 0円 | 158,400円 |
月額13,200円の賃上げでも、年間では1人当たり158,400円の給与負担増加になります。
従業員が10人であれば年間158万4,000円、20人であれば年間316万8,000円の増加です。
さらに、社会保険料の事業主負担や賞与への影響を考慮すると、実際の負担増加額はこれより大きくなる可能性があります。
4.従業員数別の人件費増加シミュレーション
今回の調査における月額改定額13,926円を参考に、全従業員が同額の賃上げを受けると仮定して計算します。
| 従業員数 | 月額給与増加額 | 年間給与増加額 |
|---|---|---|
| 5人 | 69,630円 | 835,560円 |
| 10人 | 139,260円 | 1,671,120円 |
| 15人 | 208,890円 | 2,506,680円 |
| 20人 | 278,520円 | 3,342,240円 |
| 30人 | 417,780円 | 5,013,360円 |
※年間12か月、全員同額の賃上げを仮定した試算です。賞与・社会保険料等の追加負担は含めていません。
例えば従業員20人の会社では、年間約334万円の給与負担が増加します。
現在の年間利益が500万円の会社で、売上やその他の経費が変わらなければ、単純計算で利益は約166万円まで減少します。
このように、賃上げを実施する際には、利益計画と資金繰りを合わせて確認する必要があります。
5.歯科医院・クリニックへの影響は?
医科・歯科クリニックでは、看護師、歯科衛生士、医療事務、受付スタッフ、リハビリ職など、専門性の高い人材が経営を支えています。
採用難や離職による診療体制への影響を防ぐためにも、給与水準と働きやすさの両方を見直すことが重要です。
年商5,000万円の歯科医院のケース
次の条件を仮定します。
- 年間売上高:5,000万円
- 年間人件費:1,500万円
- 人件費率:30%
- 人件費を一律4.4%引き上げる
年間人件費の増加額は66万円となります。
| 経営指標 | 賃上げ前 | 賃上げ後 |
|---|---|---|
| 年間売上高 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 年間人件費 | 1,500万円 | 1,566万円 |
| 人件費率 | 30.00% | 31.32% |
| 年間人件費増加額 | 0円 | 66万円 |
※人件費全体が4.4%増加すると仮定した概算です。実際には給与と法定福利費等を分けて試算する必要があります。
売上が変わらなければ、人件費率は30%から31.32%へ上昇します。
歯科医院では、単に診療件数を増やすのではなく、診療内容別の収益性、予約枠の稼働率、キャンセル率、材料費・技工料などを総合的に確認することが大切です。
医科クリニックで考えるべきこと
医科クリニックでは、診療報酬の算定状況や施設基準、検査・リハビリの稼働率などが収益に影響します。
人件費が増加する場合、診療報酬の適正な算定、業務分担の見直し、予約・受付業務の効率化などを検討する必要があります。
なお、診療報酬や施設基準の適用については、医療機関ごとの届出状況や算定要件を確認する必要があります。
6.賃上げの判断で間違えやすいポイント
4.4%の賃上げが義務付けられたわけではない
今回の4.4%は統計上の平均改定率です。すべての企業に同率の賃上げが義務付けられたわけではありません。
最低賃金の改定とは別の制度
最低賃金は都道府県ごとに定められる法的な賃金の下限です。今回の賃金改定率とは区別して考える必要があります。
基本給の引上げと賞与の増額は異なる
基本給を引き上げると継続的な固定費が増加します。一方、賞与は業績などに応じた設計が可能ですが、就業規則や雇用契約の内容に注意が必要です。
調査対象と自社の規模を比較する
今回の調査対象は常用労働者100人以上の企業です。小規模事業者は、同業種・同地域の求人条件や自社の収益力も参考に判断する必要があります。
7.経営者が今から取り組むべき5つの対策
① 人件費の年間増加額を計算する
基本給だけでなく、賞与、社会保険料、各種手当を含めて年間の負担増加額を把握しましょう。
② 月次の利益計画を見直す
賃上げ後の損益分岐点を計算し、毎月いくらの売上と利益が必要になるのかを明確にします。
③ 採用・定着につながる給与制度を設計する
資格、役割、能力、成果などを踏まえ、従業員が納得しやすい評価・給与制度を整えます。
④ 業務効率化とAI活用を進める
会計入力、勤怠集計、請求管理、予約確認、書類作成などの定型業務を見直します。
AIやクラウドシステムを活用する際は、個人情報や医療情報の適切な管理にも配慮する必要があります。
⑤ 税制優遇・助成金の適用可能性を確認する
賃上げに関連する税制や助成金について、最新の適用要件を確認しましょう。
賃上げ促進税制は、法人・個人事業主の区分、事業年度、給与増加額などによって適用関係が異なります。また、助成金については事前申請が必要となる場合があります。
制度の利用を前提に賃上げを決めるのではなく、申請要件や期限を確認してから進めることが重要です。
8.税理士として提案したい「次の一手」
当事務所では、賃上げを単なる人件費の増加として捉えるのではなく、経営改善のきっかけにすることをおすすめしています。
例えば、年間200万円の人件費増加が見込まれる場合、次のような改善計画を検討できます。
| 改善施策 | 年間改善目標額 | 具体的な取組例 |
|---|---|---|
| 売上増加による限界利益の改善 | 100万円 | 予約枠の稼働率改善・既存顧客への提案強化 |
| 材料費・外注費の削減 | 40万円 | 仕入条件・委託先・在庫管理の見直し |
| 業務効率化 | 40万円 | 残業削減・事務作業の自動化 |
| その他経費の削減 | 20万円 | 通信費・保守契約・固定費の見直し |
| 改善目標額合計 | 200万円 | 賃上げ負担の吸収を目指す |
※上記は経営改善計画の例であり、実現を保証するものではありません。売上増加は売上高そのものではなく、追加変動費を差し引いた限界利益ベースで評価します。また、業務効率化の効果は実際に削減できる費用を基準に計算し、二重計上を避けます。
重要なのは、賃上げを実施した後に利益が減ったことを確認するのではなく、賃上げ前に必要な改善額を明確にすることです。
9.まとめ|賃上げと利益確保を両立する経営へ
2026年の賃金引上げ等の実態に関する調査では、平均賃金改定率4.4%、月額改定額13,926円、賃上げ実施・予定企業割合92.0%という結果が公表されました。
中小企業やクリニックにとって、今後の人材確保・定着を考えるうえで重要な参考情報です。
一方、賃上げを続けるには、利益と資金繰りを確保する必要があります。
給与水準だけでなく、売上、材料費、外注費、業務効率、資金繰りを総合的に見直すことが、持続可能な経営につながります。
10.賃上げ・人件費・経営改善のご相談
一ノ瀬公認会計士・税理士事務所では、中小企業や医療機関の経営者の皆様に対し、賃上げによる利益・資金繰りへの影響分析や、経営改善に向けた具体的なご提案を行っています。
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参考資料・出典
※本記事は2026年10月24日時点の公表資料をもとに作成しています。個別の税制・助成金の適用については、最新の法令・公募要領等の確認が必要です。










