【2026年最新】歯科医院の人件費率は何%が適正?利益を残す経営改善策

【2026年最新】歯科医院の人件費率は何%が適正?利益を残す経営改善策
歯科医院の院長先生から、「人件費率は何%くらいが適正なのか」「スタッフの給与を上げたいが、利益が残るか心配」といったご相談をいただくことがあります。
歯科医院では、歯科衛生士や歯科助手、受付スタッフの確保が欠かせません。一方で、給与や社会保険料の負担が増えると、売上が伸びても利益が残らないことがあります。
今回は、厚生労働省の最新の医療経済実態調査を参考に、人件費率の考え方、個人開業と医療法人の違い、利益を残すための経営改善策について、公認会計士・税理士の視点から解説します。
【結論】歯科医院のスタッフ人件費率は25〜35%程度を初期診断の参考に。ただし、30%を超えたら経営が悪いという意味ではありません。
重要なのは、院長報酬の扱いを統一したうえで、売上・人件費・利益のバランスを確認することです。
人件費を削ることだけを考えるのではなく、現在のスタッフが生み出す収益を高めることが、持続的な経営改善につながります。
1.歯科医院の人件費率は何%が適正なのか?
人件費率とは、医院の売上に対して人件費がどのくらいの割合を占めているかを示す指標です。
人件費率(%)= 人件費 ÷ 医業収入 × 100
スタッフの給与・賞与・事業主負担の社会保険料などを含めた人件費率については、25〜35%程度を実務上の初期診断の参考範囲とする考え方があります。
ただし、これは公的な適正基準ではありません。医院の規模、診療方針、院長以外の勤務歯科医師の人数、保険診療と自費診療の構成によって適正水準は変わります。
| スタッフ人件費率 | 初期診断の考え方 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 25%未満 | 低めの水準 | 人員不足、院長への業務集中、採用競争力を確認 |
| 25〜30% | 参考範囲内 | 給与水準と生産性のバランスを確認 |
| 30〜35% | 参考範囲内 | 衛生士の稼働率や診療単価を確認 |
| 35%超 | 詳細分析を検討 | 売上不足、余剰時間、診療体制を確認 |
※上表は経営分析のための便宜的な分類であり、厚生労働省が定めた基準や統計上の平均値ではありません。
例えば、人件費率が35%を超えていても、歯科衛生士による継続管理が充実し、患者満足度や収益性が高い医院であれば、必ずしも問題とはいえません。
逆に、人件費率が25%未満でも、スタッフ不足によって予約が取れず、院長先生が過重労働になっているのであれば、改善が必要かもしれません。
2.厚生労働省の最新調査では給与費割合が約49%
厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」では、医療法人立の歯科診療所について、2024年度の給与費割合が49.1%と示されています。
ここで注意したいのは、この49.1%と、先ほど紹介したスタッフ人件費率25〜35%は、同じ定義ではないということです。
医療法人の給与費には院長等の役員報酬が含まれる場合があります。一方、個人開業の歯科医院では、開設者自身の報酬に相当する部分は給与費に含まれていません。
| 比較項目 | 個人開業の歯科医院 | 医療法人の歯科医院 |
|---|---|---|
| 院長本人の報酬 | 原則として給与費に含まれない | 役員報酬として給与費に含まれ得る |
| スタッフ給与 | 給与費に含まれる | 給与費に含まれる |
| 人件費率の比較 | 院長本人の労働対価に注意 | 役員報酬の金額に注意 |
| 利益の見方 | 院長の生活費相当額を考慮する必要がある | 役員報酬控除後の利益を確認できる |
したがって、個人開業と医療法人の人件費率を単純比較することは適切ではありません。
経営分析では、スタッフ人件費と院長・役員報酬を分けて集計することをおすすめします。
3.人件費率の正しい計算方法
例えば、年間医業収入が6,000万円の歯科医院を考えてみましょう。
| 経営項目 | 年間金額 | 医業収入に対する割合 |
|---|---|---|
| 医業収入 | 6,000万円 | 100% |
| スタッフ給与・賞与 | 1,500万円 | 25% |
| 事業主負担の社会保険料等 | 240万円 | 4% |
| スタッフ人件費合計 | 1,740万円 | 29% |
この医院のスタッフ人件費率は29%です。
給与手当だけで計算すると25%ですが、社会保険料等の事業主負担を含めると29%になります。
月次管理では、給与、賞与、法定福利費などの集計範囲を毎月統一することが重要です。
4.人件費率が高くなる5つの原因
原因① 売上が伸びていない
スタッフの人数や給与が変わらなくても、患者数が減少すれば人件費率は上昇します。
この場合、給与削減よりも、新患数、再来院率、予約キャンセル率などを確認することが先決です。
原因② 歯科衛生士の予約枠が埋まっていない
歯科衛生士を採用していても、メンテナンス枠に空きが多ければ、人件費に見合う収益を確保しにくくなります。
定期管理の予約案内、予約枠の設計、患者への継続管理の説明方法を見直す余地があります。
原因③ スタッフ配置に偏りがある
患者が少ない時間帯にスタッフが集中し、忙しい時間帯に人手が不足しているケースがあります。
曜日・時間帯別の患者数とシフトを比較することで、配置を最適化できる可能性があります。
原因④ 残業時間が増えている
診療終了後の片付け、レセプト確認、事務作業などによって残業が増えている場合、業務フローを見直す必要があります。
予約管理や事務作業のデジタル化も検討したいところです。
原因⑤ 採用・教育コストが増えている
離職と採用を繰り返す医院では、求人広告費や紹介手数料、教育時間などの負担が大きくなります。
給与を抑えることだけではなく、働きやすい職場環境や評価制度の整備も重要です。
5.年商6,000万円の歯科医院で人件費率が3ポイント改善すると?
スタッフ人件費が年間2,100万円、医業収入が6,000万円の医院を想定します。
現在のスタッフ人件費率は35%です。
ここで、人件費を削減するのではなく、現在のスタッフを活かして医業収入を増やすケースを考えてみます。
| 比較項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 年間医業収入 | 6,000万円 | 6,600万円 |
| 年間スタッフ人件費 | 2,100万円 | 2,100万円 |
| スタッフ人件費率 | 35.0% | 約31.8% |
| 医業収入の増加額 | 基準値 | 年間600万円増加 |
売上が10%増加し、人件費が変わらなければ、人件費率は35%から約31.8%に改善します。
もちろん、売上増加に伴って材料費や技工料なども増えるため、600万円がそのまま利益になるわけではありません。
仮に増収600万円に対する追加変動費が20%であれば、その他の費用が変わらないという前提で、年間480万円の利益改善が見込まれる計算です。
※この数値は経営改善の仕組みを説明するための仮定であり、実際の収益改善額を保証するものではありません。
6.歯科医院の利益を残す7つの経営改善策
改善策① 歯科衛生士の稼働率を見える化する
歯科衛生士の勤務時間に対して、どのくらいの時間が診療に活用されているかを確認します。
予約枠の空きやキャンセルの発生状況を月次で集計することで、改善すべき時間帯が見えてきます。
改善策② 定期管理の予約率を改善する
継続管理が必要な患者に対し、適切な説明と次回予約の案内を行います。
単に来院頻度を増やすのではなく、患者ごとの医学的必要性を前提に、継続的な口腔管理につなげることが大切です。
改善策③ 自費診療の収益性を分析する
自費診療は売上金額だけで判断せず、材料費、技工料、診療時間、説明時間などを差し引いて利益を確認します。
患者に十分な説明と選択肢を提供したうえで、適切な価格設定を検討します。
改善策④ 予約キャンセルによる機会損失を減らす
予約リマインドやキャンセル待ちの運用を整備し、空いた診療枠を有効活用します。
患者の利便性を損なわない範囲で、予約管理を改善することが重要です。
改善策⑤ シフトと診療時間を最適化する
曜日別・時間帯別の患者数とスタッフ数を比較します。
患者が集中する時間帯に必要な人員を配置し、残業や待機時間の発生原因を確認します。
改善策⑥ 給与制度と人事評価制度を整備する
給与を単に抑制するのではなく、役割、技能、患者対応、教育への貢献などを適切に評価する制度を検討します。
スタッフの定着は、採用費や教育負担の軽減にもつながります。
改善策⑦ AI・デジタルツールで事務作業を効率化する
予約管理、院内マニュアル、勤怠集計、経営データの整理などは、デジタル化によって効率化できる可能性があります。
AIを活用する場合は、患者情報や個人情報の取扱いに十分配慮し、利用するサービスの安全性と運用ルールを確認しましょう。
7.人件費率だけでなく、利益率とキャッシュフローも確認する
人件費率が改善しても、医院に現金が残るとは限りません。
歯科医院では、材料費・技工料・家賃・設備投資・借入金返済など、さまざまな支出が発生します。
特に借入金の元本返済は、原則として損益計算書上の経費にはなりませんが、実際の現金支出を伴います。
したがって、利益だけではなく、返済後にどの程度の現金が残るかまで確認することが大切です。
| 経営指標 | 計算方法・確認内容 | 経営上の活用方法 |
|---|---|---|
| スタッフ人件費率 | スタッフ人件費÷医業収入 | 人員配置と収益性の確認 |
| 医業利益率 | 医業利益÷医業収入 | 本業の収益性の確認 |
| 材料費・技工料率 | 材料費・技工料÷医業収入 | 診療内容別の原価管理 |
| 1人当たり医業収入 | 医業収入÷常勤換算人数 | スタッフの生産性の確認 |
| 返済余力 | 営業キャッシュフロー等と年間返済額を比較 | 借入返済と設備投資の判断 |
| 現金預金残高 | 月末残高と月間支出額を比較 | 資金繰りの安全性の確認 |
8.人件費率の改善は「給与を下げること」ではない
歯科医院経営において、スタッフは単なる費用ではありません。
歯科衛生士や歯科助手、受付スタッフの働きによって、診療体制、患者満足度、継続管理の質が支えられています。
人件費率を下げるために安易な人員削減や給与引下げを行えば、離職や診療能力の低下を招く可能性があります。
また、賃金の変更には労働契約や就業規則、労働関係法令上の制約があります。
重要なのは、スタッフが安心して働ける環境を維持しながら、医院全体の生産性を高めることです。
9.院長先生が今月から確認すべき5つのこと
- 直近12か月の医業収入とスタッフ人件費率を確認する
- 給与・賞与・法定福利費を含めて人件費を集計する
- 歯科衛生士の予約枠・稼働率・キャンセル率を確認する
- 材料費・技工料・医業利益を前年同月と比較する
- 借入金返済後に現金が残っているかを確認する
単月の数字だけで判断せず、直近12か月の推移や前年同月との比較を行うことをおすすめします。
10.税理士として提案したい「次の一手」
当事務所では、人件費率が高いという結果だけでなく、その原因を数字から分析することが重要だと考えています。
例えば、人件費率が上昇している場合でも、売上が伸び悩んでいるのか、給与水準が上がっているのか、スタッフの稼働率が低下しているのかによって、改善策は異なります。
そのため、月次試算表と診療データを組み合わせ、次のような経営改善を検討します。
- 歯科衛生士の稼働率改善による売上向上
- 診療メニュー別の原価・利益分析
- 採用計画と人件費予算の策定
- 適切な給与制度・賞与予算の検討
- 資金繰りと借入金返済計画の見直し
- 設備投資や医療法人化の検討
- 月次経営指標の見える化とAIによる分析効率化
特におすすめしたいのは、「人件費率・材料費率・利益率・現金預金残高」を毎月確認する仕組みをつくることです。
経営数字を定期的に確認することで、問題が大きくなる前に対策を検討しやすくなります。
11.まとめ|人件費率よりも「利益が残る仕組み」が重要
歯科医院のスタッフ人件費率は、25〜35%程度を初期診断の参考範囲とする考え方がありますが、すべての医院に当てはまる適正基準ではありません。
個人開業と医療法人では院長報酬の扱いが異なるため、同じ条件で比較することが重要です。
そして、人件費率が高い場合でも、安易に人員や給与を削減するのではなく、予約稼働率、継続管理、診療単価、シフト、業務効率を見直すことが改善の第一歩です。
目指すべきなのは、人件費率を単純に下げることではなく、スタッフの待遇を守りながら利益と現金が残る歯科医院経営です。
参考資料・出典
- 厚生労働省「医療経済実態調査(医療機関等調査)」
- 厚生労働省・中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査の概要」関連資料
- 関連記事:歯科医院の経営状況を国が調査|売上・人件費・利益を税理士が解説
※本記事は2026年10月18日時点で確認できる公表資料を参考に、歯科医院の経営分析について独自に解説したものです。人件費率の参考範囲や改善例は公的な適正基準ではなく、実際の経営判断には個別の分析が必要です。
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