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【2026年・令和8年度税制改正】中小企業向け賃上げ促進税制はどう変わる?税額控除・5年間の繰越を税理士が解説

2026.09.26
【2026年・令和8年度税制改正】中小企業向け賃上げ促進税制はどう変わる?税額控除・5年間の繰越を税理士が解説

【2026年・令和8年度税制改正】中小企業向け賃上げ促進税制はどう変わる?税額控除と5年間の繰越を税理士が解説

人手不足や物価上昇が続くなか、従業員の給与や賞与を引き上げる中小企業が増えています。

そこで、経営者の方にぜひ確認していただきたいのが、「中小企業向け賃上げ促進税制」です。

令和8年度税制改正では賃上げ促進税制全体の見直しが行われましたが、中小企業については基本となる賃上げ要件や税額控除率が維持されています。

一方で、これまで利用できた教育訓練費による税額控除率の上乗せ措置は廃止されます。

この記事では、令和8年度税制改正を踏まえ、中小企業の経営者が知っておきたいポイントを税理士・公認会計士が分かりやすく解説します。

【まず結論】令和8年度改正のポイント

① 中小企業向けの基本制度は維持
② 給与等支給額1.5%以上増加 → 基本15%の税額控除
③ 給与等支給額2.5%以上増加 → 基本30%の税額控除
④ 一定の子育て支援・女性活躍に関する上乗せ措置は継続
⑤ 教育訓練費による上乗せ措置は廃止
⑥ 控除しきれない金額は一定の要件のもと5年間繰越可能

中小企業向け賃上げ促進税制とは?

中小企業向け賃上げ促進税制とは、従業員に支払う給与等を前年度より一定以上増加させた中小企業について、給与等の増加額の一部を法人税または所得税から控除できる制度です。

給与を支払えば、通常はその給与が会社の経費となります。

賃上げ促進税制の要件を満たせば、それに加えて一定額を法人税等から直接差し引ける可能性があるため、賃上げを実施している会社にとって非常に重要な制度です。

特に、

  • 従業員の昇給を行った
  • 賞与を増額した
  • 従業員を新たに採用した
  • 人手不足対策として給与水準を引き上げた

といった会社は、決算前に対象となるか確認しておきたいところです。

令和8年度税制改正で何が変わった?

令和8年度税制改正では、賃上げ促進税制について見直しが行われています。

大企業向けの措置などが見直される一方、中小企業については基本となる仕組みが維持されています。

中小企業経営者に特に関係するポイントは、次の2つです。

ポイント① 基本となる税額控除は維持

給与等支給額が前年度より1.5%以上または2.5%以上増加した場合に適用される基本的な税額控除の仕組みは維持されます。

ポイント② 教育訓練費による上乗せ措置は廃止

これまで一定の教育訓練費の増加要件を満たした場合に利用できた税額控除率の上乗せ措置については、令和8年度税制改正により廃止されます。

どのくらい賃上げすると税額控除を受けられる?

中小企業向け賃上げ促進税制では、給与等支給額の前年度からの増加率によって基本となる税額控除率が変わります。

給与等支給額の増加率 基本の税額控除率
前年度比1.5%以上 15%
前年度比2.5%以上 30%

ここで誤解しやすいのが、給与総額の15%や30%がそのまま税金から差し引かれるわけではないという点です。

基本的には、前年度から増加した給与等の金額をもとに税額控除額を計算します。

具体例|給与が100万円増えたらどうなる?

簡単な例で考えてみましょう。

【具体例】

前年度の給与等支給額:2,000万円
当年度の給与等支給額:2,100万円
給与等の増加額:100万円
給与等の増加率:5%

このケースでは、給与等支給額が前年度より2.5%以上増加しています。

基本の税額控除率30%が適用されるケースとして単純化すると、

100万円 × 30% = 30万円

となり、計算上は30万円の税額控除となります。

ただし、実際には法人税額等の20%が税額控除の上限となるため、30万円全額をその年度に控除できるとは限りません。

注意!

「100万円賃上げすれば必ず30万円税金が安くなる」という制度ではありません。

実際の節税額は、給与等支給額の内容、法人税額、各種適用要件などによって変わります。

子育て支援・女性活躍に取り組む企業は5%上乗せの可能性

一定の子育て支援や女性活躍に積極的に取り組む中小企業については、税額控除率を5%上乗せできる措置があります。

中小企業の場合、一定の「くるみん認定」や「えるぼし認定」などがポイントとなります。

人材採用・定着への取り組みは、単なる福利厚生の問題だけではありません。

【経営者に確認していただきたいポイント】

働きやすい職場づくり
↓
採用力・定着率の向上
↓
人手不足対策・生産性向上
↓
一定の場合には税制上のメリット

というように、人事・採用・税務を一体で考えることが重要です。

令和8年度改正の注意点|教育訓練費の上乗せ措置は廃止

今回の改正で特に注意したいのが、教育訓練費による税額控除率の上乗せ措置の廃止です。

改正前の制度では、一定の教育訓練費の増加要件を満たした場合、税額控除率を10%上乗せできる仕組みが設けられていました。

令和8年度税制改正により、この上乗せ措置は廃止されます。

ただし、いつから使えなくなるのかについては注意が必要です。

【法人】
令和6年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度について、改正前の教育訓練費に関する上乗せ措置の対象となり得ます。

【個人事業主】
令和7年・令和8年について対象となり得ます。

そのため、法人の場合には「2026年だから教育訓練費の上乗せはもう使えない」と単純に判断せず、自社の事業年度の開始日を確認することが重要です。

赤字企業にも重要|5年間の繰越税額控除

中小企業向け賃上げ促進税制で、ぜひ知っておいていただきたいのが5年間の繰越税額控除制度です。

賃上げを実施しても、その年度が赤字で法人税が発生しない場合があります。

また、黒字であっても法人税額が少なく、税額控除限度額の関係で控除しきれない場合もあります。

中小企業向け制度では、一定の要件を満たせば、控除しきれなかった金額を5年間繰り越すことが可能です。

例えば、

「今年は人材を積極的に採用した」

「従業員の給与も引き上げた」

「しかし、新店舗や設備への投資が大きく、決算は赤字になった」

という企業でも、将来利益が出た年度に繰越税額控除を利用できる可能性があります。

ただし、繰越控除を実際に利用する年度については、給与等支給額が前年度より増加していることなど、一定の要件があります。

また、将来利用するためには申告時の手続も重要となるため、「赤字だから関係ない」と判断しないことがポイントです。

決算が終わってからでは遅い?決算前に確認したい11項目

賃上げ促進税制は、決算・申告の段階だけ確認するのではなく、決算前からシミュレーションすることをおすすめします。

【賃上げ促進税制・決算前チェックリスト】

☑ 前年度の給与等支給額はいくらか

☑ 当年度の給与等支給額はいくらになる見込みか

☑ 前年度比1.5%以上増加しているか

☑ 前年度比2.5%以上になる可能性はないか

☑ 決算までに賞与を支給する予定はあるか

☑ 新規採用者・退職者の影響はどうなっているか

☑ 税額控除はいくらになる見込みか

☑ 法人税額等20%の控除上限にかからないか

☑ 控除しきれない金額が発生しないか

☑ 5年間の繰越税額控除を利用できないか

☑ 子育て支援・女性活躍に関する上乗せ要件を満たしていないか

【超提案型】税理士が考える本当のポイント

賃上げ促進税制を検討するときに、税額控除だけで判断するのはおすすめできません。

例えば、給与を年間100万円増やして税額控除を受けられたとしても、給与の増額そのものは翌年度以降も継続する可能性があります。

さらに、給与の増加に伴って会社が負担する社会保険料などが増える場合もあります。

したがって、賃上げを検討する際には、

  • 今後の売上見込み
  • 粗利益率
  • 人件費率
  • 社会保険料の増加
  • 採用コスト
  • 離職防止によるメリット
  • 手元の現金・預金
  • 借入金の年間返済額
  • 今後3~5年間のキャッシュフロー

まで確認することが重要です。

税金だけではなく「会社にお金が残るか」を考える

「いくら賃上げすると、いくら税金が減るのか」だけでは十分ではありません。

賃上げ後も十分な現金・預金が残るのか。
人材の採用・定着によって売上や生産性をどこまで伸ばせるのか。

ここまでシミュレーションして初めて、会社にとって適切な賃上げ額を判断できます。

当事務所では、節税だけではなく、財務・資金繰りまで含めた「次の一手」を考えることを重視しています。

まとめ|賃上げした中小企業は決算前に必ず確認を

令和8年度税制改正では、賃上げ促進税制全体について見直しが行われました。

その中でも、中小企業向けについては基本となる制度が維持されています。

【もう一度ポイントを整理】

・給与等支給額が1.5%以上増加 → 基本15%の税額控除

・給与等支給額が2.5%以上増加 → 基本30%の税額控除

・一定の子育て支援・女性活躍に取り組む企業には5%の上乗せ

・教育訓練費による10%上乗せは廃止

・控除しきれなかった金額は一定の要件のもと5年間繰越可能

・税額控除には法人税額等の20%という上限がある

特に、従業員を増やした会社、昇給を実施した会社、賞与を増額した会社は対象となる可能性があります。

「うちは対象になるのか?」だけでなく、

「あとどのくらい給与が増えると要件を満たすのか」
「税額控除はいくらになるのか」
「賃上げ後の資金繰りは大丈夫なのか」

まで、決算前にシミュレーションしておくことをおすすめします。

参考・出典

・財務省「令和8年度税制改正」
・経済産業省「令和8年度税制改正について」
・中小企業庁「中小企業向け賃上げ促進税制 ご利用ガイドブック」

※本記事は、上記行政機関が公表している制度内容を参考に、一ノ瀬公認会計士・税理士事務所が独自に構成・解説したものです。行政資料や他の税理士事務所等の記事を転載したものではありません。制度の適用については、法人・個人の区分、事業年度、給与等支給額、税額その他の状況によって異なります。実際の適用にあたっては最新の法令・公表資料等をご確認ください。


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一ノ瀬公認会計士・税理士事務所
【超提案型】公認会計士・税理士 一ノ瀨 聡

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