【税理士が解説】税務調査の対策は何をすればいい?調査前に確認したい7項目と当日の注意点

【税理士が解説】税務調査の対策は何をすればいい?調査前に確認したい7項目と当日の注意点
「税務署から税務調査の連絡がありました」
この電話を受けた瞬間、不安になる経営者や個人事業主の方は少なくありません。
「何か間違っていたのだろうか?」
「追加で多額の税金を払うことになる?」
「どこまで調べられるの?」
「昔の領収書も全部用意しないといけない?」
さまざまなことが頭に浮かぶと思います。
しかし、税務調査の連絡があったからといって、慌てる必要はありません。
税務調査対策で本当に大切なのは、税務署に何も言われないように取り繕うことではありません。
「この取引をなぜこのように処理したのか」を、資料と事実に基づいて説明できる状態にしておくことです。
この記事では、税理士・公認会計士の立場から、税務調査の連絡を受けたときの初動、調査前に確認しておきたいポイント、調査当日の注意点まで、経営者・個人事業主の方に向けて分かりやすく解説します。
そもそも税務調査とは?
税務調査は、納税者が提出した申告書の内容について、税務署などが帳簿や資料、実際の取引内容などを確認する手続です。
法人であれば法人税や消費税、源泉所得税など、個人事業主であれば所得税や消費税などが確認の対象になることがあります。
「税務調査に選ばれた=脱税を疑われている」とは限りません。
通常の税務調査では、申告された売上や経費などが実際の取引と合っているか、税務上の処理が適切かといった点が確認されます。
必要以上に怖がるよりも、まずは落ち着いて事実関係と資料を整理することが重要です。
税務調査の電話が来たら、まず何をする?
その場ですべてを決める必要はありません
顧問税理士がいる場合、まず税理士へ連絡することをおすすめします。
税務署から電話があった際には、次の内容をメモしておきましょう。
- 税務署名
- 担当者の部署・氏名
- 連絡先
- 対象となる税目
- 対象期間
- 調査希望日
- 調査場所
その場で焦って、
「その日で大丈夫です」
「何でも用意します」
などと即答する必要はありません。
税務調査の連絡が来たら
「まず税理士へ」
税務調査対策|調査前に確認したい7つのポイント
① 過去の申告書と決算書を確認する
最初に確認したいのは、調査対象となる期間の申告内容です。
法人であれば、
- 法人税申告書
- 決算書
- 消費税申告書
- 勘定科目内訳明細書
- 法人事業概況説明書
個人事業主であれば、
- 所得税確定申告書
- 青色申告決算書または収支内訳書
- 消費税申告書
などを確認します。
重要なのは「この数字は何からできているのか?」を説明できることです。
例えば、決算書に多額の「雑費」が計上されていたとして、その中身を誰も説明できない状態では、調査時に確認作業が増えてしまいます。
まずは申告書と帳簿を見ながら、過去の処理を振り返っておきましょう。
② 売上の計上漏れ・計上時期を確認する
税務調査では、売上は非常に重要な確認項目の一つです。
特に注意したいのが、決算日前後の取引です。
例えば、3月決算法人で、
3月中に仕事が完了
↓
4月に請求書を発行
↓
4月に入金
となっていた場合、
「入金が4月だから4月の売上」
と単純に判断できるとは限りません。
取引内容や契約条件などによって、売上を計上すべき時期を検討する必要があります。
「請求日」だけでなく、実際にいつ商品を引き渡したのか・サービスを提供したのかまで確認することが重要です。
③ 「これは本当に事業の経費?」を再確認する
税務調査で質問を受けやすいのが、事業とプライベートの境界線にある支出です。
- 飲食代
- 旅行代
- 車両関係費
- ガソリン代
- 家賃
- 携帯電話代
- インターネット代
- クレジットカード決済
- 高額な備品
これらは、項目名だけを見て経費になる・ならないと決められるものではありません。
大切なのは「その支出が事業とどのように関係しているのか」です。
例えば同じ1万円の飲食代でも、
「誰と行ったのか分からない」
のと、
「取引先A社の○○氏と、新規案件について打ち合わせを行った」
のでは、後から説明するときの状況が大きく違います。
領収書を保存するだけではなく、相手・目的・業務との関係性を残しておく習慣が税務調査対策につながります。
④ 現金売上の管理方法を確認する
現金を扱う事業では、日々の売上管理が特に重要です。
例えば、
- 飲食店
- 小売業
- 美容関係
- 医療機関
- 歯科医院
- その他、窓口で現金を受け取る事業
などです。
確認したいのは、「実際に受け取ったお金」と「帳簿に計上された売上」がつながっているか、という点です。
レジデータ、日計表、予約システム、窓口集計表、預金への入金など、業種によって売上を確認する資料は異なります。
例えば歯科医院であれば、
窓口で集計した金額
↓
実際の現金
↓
会計ソフトに計上された金額
がきちんとつながっているかを確認しておきましょう。
⑤ 社長・役員・家族とのお金のやり取りを整理する
中小企業では、会社と社長のお金が近くなりやすい傾向があります。
そこで確認しておきたいのが、
- 役員貸付金
- 役員借入金
- 役員社宅
- 会社名義の車
- 社長個人のクレジットカード
- 家族への給与
- 会社と社長との資金移動
などです。
「この100万円は会社のお金なのか、社長個人のお金なのか」
といった点が帳簿上分かりにくくなっている場合には、事前に整理しておく必要があります。
⑥ 消費税・インボイス関係も確認する
法人税や所得税ばかりに目が行きがちですが、消費税についても確認が必要です。
- 課税取引かどうか
- 仕入税額控除の処理
- インボイスの保存
- 課税事業者・免税事業者との取引
- 簡易課税の適用関係
- 各種届出の状況
消費税は一つの取引の処理を誤ると、その影響が積み重なることがあります。
「法人税・所得税の経費として問題ないか」だけでなく、「消費税の処理は正しいか」という別の視点でも確認しましょう。
⑦ 契約書・請求書・領収書を「説明できる状態」にする
書類は、単に段ボールやパソコンの中に保存されていればよいわけではありません。
必要になったときに、
「この取引の資料はこちらです」
と確認できる状態が理想です。
例えば、
- 契約書
- 見積書
- 請求書
- 領収書
- 預金取引資料
- 給与関係資料
- 固定資産関係資料
- 各種台帳
などを年度別・取引先別など一定のルールで整理しておきます。
電子データのファイル名も工夫しましょう。
2026-08-20_○○株式会社_パソコン購入_330000円.pdf
一定の命名ルールを会社・事務所全体で統一しておくと、税務調査だけでなく日常業務も効率化できます。
税務調査でやってはいけないこと
ここは非常に重要です。
税務調査の連絡が来ると、
「この領収書はまずいかもしれない」
「この処理を直しておいた方がいいのでは?」
と不安になるかもしれません。
絶対に避けるべきなのは、事実を変えてしまうことです。
- 存在しない領収書を作る
- 取引内容を事実と違うものにする
- 帳簿を都合よく書き換える
- 資料を意図的に隠す
- 事実と異なる説明をする
もし調査前の確認で申告内容の誤りに気付いたのであれば、
「隠す」のではなく
「どう対応するのが適切か」を税理士に相談する
これが基本です。
税務調査当日|聞かれたことに何でも即答しなくていい
税務調査では、調査担当者からさまざまな質問を受けることがあります。
その際に注意したいのが、
分からないことを想像で答えない
ということです。
例えば3年前の取引について、
「たぶん取引先との食事だったと思います」
と答えたものの、後から確認するとまったく違う支出だった。
このようなことは避けたいところです。
記憶が曖昧であれば、資料を確認したうえで正確に回答することが重要です。
分からないことを「分からない」と伝えることと、虚偽の説明をすることは全く違います。
税務署から指摘されたら、全部その場で認めるべき?
これもよくある誤解です。
税務調査で調査担当者から指摘を受けても、まず確認すべきなのは、
「事実関係はどうなっているのか」
「税務上の根拠は何なのか」
という点です。
例えば、
「この支出は経費になりません」
という指摘があったとしても、
- どのような契約だったのか
- 誰に支払ったのか
- 何の目的だったのか
- 事業とどのような関係があるのか
によって、検討すべき内容は変わります。
税務署と必要以上に対立する必要はありません。
一方で、事実関係や根拠を確認しないまま結論を出す必要もありません。
税務調査対策は「調査前の数日間」だけではない
本当におすすめしたい税務調査対策は、毎月の経理そのものを整えることです。
毎月の経理を「いつ調査が来ても説明できる状態」にする
☑ 売上の計上漏れはないか
☑ 不明な入金はないか
☑ 個人的な支出が混ざっていないか
☑ 高額な経費の証拠資料はあるか
☑ 役員貸付金・借入金に不自然な動きはないか
☑ 消費税区分は適切か
☑ 契約書・請求書は保存されているか
これを毎月行えば、税務調査の連絡が来たときに、数年分の資料を一から整理する必要がなくなります。
そして、この仕組みにはもう一つ大きなメリットがあります。
経営数字の精度が上がります。
税務調査対策のために売上・経費・現預金・売掛金などを正確に管理することは、そのまま会社の経営管理の質を高めることにつながります。
私が考える「税務調査に強い会社」とは
税務調査対策という言葉から、
「税務署に指摘されない方法」
をイメージされる方もいるでしょう。
しかし、私は少し違うと考えています。
税務調査に強い会社とは、
「説明できる会社」です。
例えば300万円の設備投資について質問されたとき、
「昔のことなので分かりません」
ではなく、
「この設備は○○業務のために導入しました。契約書はこちら、請求書はこちら、支払いはこちらです」
と説明できる。
交際費について質問されたときにも、
「たぶん仕事関係です」
ではなく、
「○○社との商談で、参加者と目的を記録しています」
と説明できる。
帳簿の数字と、実際の事業活動が一本の線でつながっている。
この状態を日頃から作っておくことこそ、最も効果的な税務調査対策の一つだと考えています。
税務調査対策チェックリスト
□ 売上の計上漏れがない
□ 決算日前後の売上を確認している
□ 経費の目的を説明できる
□ 飲食代について相手・目的を記録している
□ 現金売上と帳簿が一致している
□ 会社と社長個人のお金を分けている
□ 家族への給与について説明できる
□ 消費税・インボイスの処理を確認している
□ 契約書・請求書・領収書をすぐ確認できる
□ 高額な取引について証拠資料を残している
「いいえ」が多かったとしても、税務調査が来るまで何もしないのではなく、今から一つずつ改善していくことが重要です。
まとめ|一番の税務調査対策は「普段から説明できる経理」
税務調査対策というと、特別なテクニックがあるように感じるかもしれません。
しかし、基本はとてもシンプルです。
① 正しく記帳する
② 証拠資料を残す
③ 取引の内容を説明できるようにする
④ 会社と個人のお金を分ける
⑤ 毎月チェックする
そして、税務調査の連絡が来た場合には、慌てて帳簿を触るのではなく、
まず税理士へ相談し、事実関係を整理する。
これが重要です。
税務調査は、調査当日の受け答えだけで結果が決まるものではありません。
日々の経理体制そのものが、最大の税務調査対策です。
税務調査についてお困りの方へ
- 税務署から税務調査の連絡が来た
- 突然、税務署の職員が訪問してきた
- 顧問税理士がいないので、どう対応すればいいか分からない
- 過去の申告内容に不安がある
- 税務署から経費を否認すると言われた
このような場合には、できるだけ早い段階で税理士へ相談することをおすすめします。
税務調査は、調査当日の対応だけでなく、調査前にどこまで事実関係を整理できるかが非常に重要です。
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