【2027年分から最大75万円】青色申告特別控除の要件とは?実際の適用は難しい?税理士が解説

【2027年分から最大75万円】青色申告特別控除の要件とは?実際の適用は難しい?税理士が解説
個人事業主やフリーランスの節税で重要な「青色申告特別控除」。
2027年分(令和9年分)の所得税から制度が見直され、一定の要件を満たした場合の青色申告特別控除の最高額が75万円になります。
これだけを見ると、
「e-Taxで確定申告すれば75万円控除を受けられるの?」
と思われるかもしれません。
しかし、結論からいうと、e-Taxで申告するだけで自動的に75万円控除になるわけではありません。
75万円控除を受けるためには、これまで以上に帳簿やデータの保存方法まで含めた対応が重要になります。
また、当事務所としては、少なくとも制度開始当初は、すべての個人事業主が簡単に75万円控除へ移行できる制度ではないと考えています。
今回は、2027年分からの青色申告特別控除について、75万円控除を受けるための要件と、実際に75万円を目指すべきかという実務上のポイントを税理士が分かりやすく解説します。
- 2027年分から青色申告特別控除は最大75万円へ
- 75万円控除を受けるための基本的な考え方
- 要件① 青色申告の承認を受ける
- 要件② 複式簿記などによって適切に記帳する
- 要件③ 貸借対照表・損益計算書等を作成する
- 要件④ 期限までにe-Taxで確定申告する
- 最大のポイント|75万円にはさらに電子保存等の要件がある
- 届出についても確認が必要
- 税理士の見解|75万円控除を実際に使うハードルは低くない
- 重要|増える控除は10万円。費用対効果を考える
- では、75万円控除は使わない方がいい?
- 2027年分は「とにかく75万円」を目指す必要はない
- 75万円控除を検討する方のチェックリスト
- 2026年中に確認しておくことをおすすめします
- まとめ|75万円控除は「10万円増える」だけで判断しない
- 参考資料・出典
2027年分から青色申告特別控除は最大75万円へ
2027年分(令和9年分)から、一定の要件を満たす青色申告者について、青色申告特別控除の最高額が75万円となります。
ただし、重要なのは、
という点です。
75万円控除には、一定の電子帳簿保存または対象となるシステムを利用した一定のデータ保存など、追加の要件があります。
75万円控除を受けるための基本的な考え方
75万円控除を検討する場合、まず青色申告特別控除の基本的な要件を満たす必要があります。
① 青色申告の承認を受ける
② 正規の簿記の原則により記帳する
③ 貸借対照表・損益計算書等を作成する
④ 法定申告期限までにe-Taxで確定申告する
⑤ さらに一定の電子帳簿保存等の要件を満たす
特に⑤が、75万円控除を考えるうえで重要になります。
要件① 青色申告の承認を受ける
まず、青色申告特別控除ですから、青色申告者であることが前提です。
新たに青色申告を始める場合は、原則としてその年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
その年の1月16日以後に新規開業した場合などは、原則として事業開始の日から2か月以内となります。
すでに青色申告の承認を受けている方については、通常、毎年申請し直す必要はありません。
要件② 複式簿記などによって適切に記帳する
75万円控除の前提となる青色申告特別控除では、正規の簿記の原則に従った記帳が重要です。
一般的には複式簿記によって、日々の取引を記録していきます。
売上や経費だけではなく、
- 現金
- 普通預金
- 売掛金
- 買掛金
- 借入金
- 固定資産
などについても適切に記帳し、帳簿を作成する必要があります。
現在では会計ソフトを利用することで、複式簿記による記帳の負担をかなり軽減できます。
ただし、後ほど説明するように、「会計ソフトを使っている=75万円控除を受けられる」ではありません。
要件③ 貸借対照表・損益計算書等を作成する
帳簿に基づいて、貸借対照表や損益計算書などを作成します。
損益計算書は、簡単にいえば「1年間でどれくらい利益が出たのか」を確認する書類です。
一方、貸借対照表は、年末時点で預金、売掛金、借入金、固定資産などがどれくらい残っているのかを確認する書類です。
年末になってからまとめて帳簿を作成するのではなく、毎月会計処理を行い、預金残高や売掛金、借入金などの残高を確認しておくことをおすすめします。
要件④ 期限までにe-Taxで確定申告する
2027年分以後の制度では、確定申告書や貸借対照表、損益計算書等を法定申告期限までにe-Taxで提出することが重要になります。
ここで注意したいのが「期限」です。
そのため、申告期限直前になって1年分の帳簿をまとめるのではなく、日頃から会計処理を進めておくことが大切です。
最大のポイント|75万円にはさらに電子保存等の要件がある
ここが今回の記事で最も重要な部分です。
75万円控除を受けるには、基本となる要件に加えて、一定の電子保存に関する要件を満たす必要があります。
大きく考えると、次の2つの方法があります。
① 一定の要件を満たした電子帳簿として保存する方法
一つ目は、仕訳帳や総勘定元帳について、電子帳簿保存法上の一定の要件を満たした形で電子保存する方法です。
注意したいのは、
とは限らないことです。
訂正・削除に関する記録など、法令上求められる要件を満たす必要があります。
したがって、現在使用している会計ソフトについて、75万円控除に必要となる電子帳簿保存の要件に対応しているかを確認することが重要です。
② 一定の「デジタルシームレス保存」に対応する方法
もう一つが、一定のシステムを利用した「デジタルシームレス保存」に対応する方法です。
ここは誤解しやすいところです。
単にPDFの請求書や領収書をパソコンのフォルダに保存しておけば75万円控除を受けられる、という制度ではありません。
国税庁長官が定める基準に適合した一定のシステムを利用し、対象となるデジタルインボイスや金融機関等の決済データなどを一定の要件に従って保存することが必要になります。
そのため、
- PDFをフォルダに保存している
- 紙の領収書をスキャンしている
- メールで届いた請求書を保存している
というだけで、直ちに75万円控除の要件を満たすわけではありません。
届出についても確認が必要
デジタルシームレス保存によって75万円控除の適用を受ける場合には、所定の届出についても確認が必要です。
一方、旧制度における所定の届出をすでに行っている場合には、新しい75万円控除に関する届出を改めて提出する必要がないケースもあります。
届出の有無だけで自己判断せず、どの方法で75万円控除を受けるのかとセットで確認することをおすすめします。
税理士の見解|75万円控除を実際に使うハードルは低くない
ここからは、制度の説明だけではなく、実務上の観点から考えてみます。
2027年分から最高75万円になると聞けば、
「今まで65万円だったので、当然75万円にした方が得では?」
と思うのが自然です。
しかし当事務所では、少なくとも制度開始当初は、すべての個人事業主が簡単に75万円控除へ移行できるわけではないと考えています。
理由① e-Taxだけでは75万円にならない
これまで65万円控除を受けてきた方の中には、複式簿記で帳簿を作成し、確定申告時にe-Taxを利用している方も多いでしょう。
75万円控除は、それだけでは足りません。
確定申告時だけではなく、日々の帳簿やデータの保存方法まで意識する必要があります。
65万円控除
複式簿記などの基本要件を満たし、期限内のe-Tax申告等に対応
75万円控除
上記に加えて、一定の電子帳簿保存または対象となるデータ保存等への対応が必要
理由② 会計ソフトを導入するだけでは足りない
クラウド会計ソフトなどを使っている方も注意が必要です。
確認すべきなのは、単に「どの会計ソフトを使っているか」だけではありません。
- 75万円控除に必要となる要件に対応できるか
- 必要な設定を行っているか
- 実際の帳簿保存方法が要件を満たしているか
- 日々の運用まで適切に行われているか
まで確認する必要があります。
ソフトを導入することと、税制上の要件を満たすことは別問題と考えておいた方が安全です。
理由③ デジタルシームレス保存にも一定のハードルがある
デジタルシームレス保存についても、単純な電子保存ではありません。
対象となるシステムやデータ、保存方法などについて一定の条件があります。
そのため、現在の経理方法をほとんど変更せずに、すべての個人事業主が簡単に75万円控除へ移行できるとは限りません。
重要|増える控除は10万円。費用対効果を考える
ここは税理士として特にお伝えしたいところです。
65万円控除から75万円控除へ変更できた場合、増加する所得控除額は10万円です。
税金そのものが10万円安くなるわけではありません。
例えば所得税率が20%の方であれば、単純計算した所得税への影響は約2万円です。
これに住民税などへの影響も考えられますが、実際の節税額は所得状況などによって異なります。
したがって、75万円控除を受けるためだけに、
- 高額なシステムを導入する
- 毎月のシステム利用料が大きく増える
- 経理作業が複雑になる
- 事務作業が大幅に増える
のであれば、本当に費用対効果が合っているのかを考える必要があります。
75万円控除を受けられるかどうかだけではなく、
① 実際にいくら節税できるのか
② システム導入・利用費はいくらか
③ 経理作業の負担は増えるのか
④ 会計入力を自動化できるのか
⑤ 経理時間をどれだけ削減できるのか
まで含めて判断することが大切です。
では、75万円控除は使わない方がいい?
そういうわけではありません。
むしろ75万円控除への対応をきっかけに、経理業務全体をデジタル化できるのであれば、大きなメリットがあります。
例えば、
- 銀行口座との自動連携
- クレジットカードとの自動連携
- デジタルインボイスの活用
- 請求書処理の電子化
- 会計入力の自動化
- 経理資料のペーパーレス化
などを同時に進めることができれば、単なる「10万円の控除額アップ」だけではなくなります。
「経理を効率化・デジタル化した結果、75万円控除も活用する」
という考え方がおすすめです。
2027年分は「とにかく75万円」を目指す必要はない
75万円という数字だけを見ると、65万円より有利なので、誰でも75万円を選択した方がよいように感じます。
しかし、事業経営で本当に重要なのは、控除額ではなく、最終的に手元にいくらお金が残るのかです。
75万円控除への対応コストや事務負担が節税メリットを上回るのであれば、無理に75万円を目指す必要はありません。
反対に、すでに会計・請求・決済のデジタル化が進んでいる事業者であれば、75万円控除への対応を検討する価値があります。
したがって、2027年分については、
だけではなく、
「75万円控除を受けるために何を変更する必要があるのか?」
「その費用と手間に見合うメリットがあるのか?」
まで確認してから判断しましょう。
75万円控除を検討する方のチェックリスト
□ 青色申告の承認を受けている
□ 正規の簿記の原則による記帳ができている
□ 貸借対照表・損益計算書等を作成できる
□ 法定申告期限までにe-Taxで申告できる
□ 利用している会計ソフト・システムを確認した
□ 一定の電子帳簿保存等の要件を満たせるか確認した
□ 必要となる届出を確認した
□ 75万円控除による実際の節税額を計算した
□ システム費用・事務負担と比較した
□ 経理業務の効率化にもつながるか検討した
2026年中に確認しておくことをおすすめします
75万円控除を検討するのであれば、2028年の確定申告時期になってから考えるのではなく、2027年の取引が始まる前に準備しておくことをおすすめします。
なぜなら、今回の制度は確定申告の方法だけではなく、日々の帳簿やデータの保存方法にも関係するからです。
2026年中に、
- 現在利用している会計ソフト
- 帳簿の保存方法
- 銀行・クレジットカードとの連携状況
- 請求書の発行・受領方法
- 電子取引データの保存方法
などを一度確認しておくとよいでしょう。
まとめ|75万円控除は「10万円増える」だけで判断しない
2027年分から、一定の要件を満たした場合の青色申告特別控除は最高75万円となります。
ただし、最も重要なのは、
75万円控除になるわけではない
ということです。
一定の電子帳簿保存や対象となるデータ保存などへの対応が必要になるため、実際に75万円控除を適用するハードルは、従来の65万円控除より高くなると考えられます。
また、65万円から増える控除額は10万円です。
そのため、75万円控除だけを目的としてシステム費用や事務負担を増やすのではなく、節税効果と経理効率化の両方を考えて判断することが重要です。
当事務所では、単に「75万円控除の方がお得です」と考えるのではなく、現在の会計ソフトや経理方法を確認し、65万円控除を継続する場合と75万円控除へ対応する場合の費用対効果まで比較することをおすすめしています。
参考資料・出典
・国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
・国税庁「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」
・財務省「令和8年度税制改正の大綱」
※本記事は2026年10月時点で公表されている法令、国税庁・財務省等の公表資料をもとに、一ノ瀬公認会計士・税理士事務所が独自に構成・解説したものです。制度の適用にあたっては、個々の状況や今後公表される最新情報をご確認ください。
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